雲レーダー観測による積雲分布(東京周辺)

積雲・積乱雲について

積雲の発生と積乱雲への成長
積雲の発生と積乱雲への成長の模式図.

積雲

積雲は,対流圏下層(高度 2000 m 以下)で発生した上昇気流 に伴い形成されます. この上昇気流の成因には,日射により地面が暖められた影響で生じるものや, 前線(温かい空気と冷たい空気が接するところ) 付近で温かい空気が冷たい空気を乗り上げて発生するものなど, いくつかの成因があります.

この上昇気流により空気が上空へ運ばれると,気圧の低下に伴い空気は膨張し,気温が低下します. 気温がある温度(露点温度)まで低下すると, 空気中の水蒸気が凝結しはじめ,微小な水滴(雲粒,直径 1 μm から数十 μm 程度) が発生します. この微小な水滴の集まりが雲です. この,水蒸気が凝結して微小な水滴になる過程で熱 (凝結熱)が発生し, この熱で空気が暖められると,この空気は周囲の空気よりもますます暖かく, かつ,軽くなり,上昇運動を継続します. これらの過程により発生し, 高さ方向に成長する雲を積雲と呼びます.

積雲は「綿雲(わたぐも)」とも呼ばれ,晴れた日によく見られる雲ですが, 大気の状態が不安定なとき(上空の気温がいつもよりも低く,日射が強いとき)や, 対流圏下層の水蒸気量が多い時には急激に成長し, 雄大積雲とよばれる厚さ数千メートルの積雲になります.

発達する積雲の中では水蒸気の凝結が盛んなため,雲粒の数・大きさが増大し,やがて, 雲粒同士の衝突・併合により大きな雲粒が形成され始めます.

積乱雲

発達する積雲の中で雲粒同士の衝突・併合が進み,やがて雨粒が形成されると, 積雲は積乱雲に呼び名が変わります. 特に発達した積乱雲では大量の雨が形成され, それが地上に落下すると大雨となります.

雨が地上付近に到達すると雨は蒸発し, その気化熱により積乱雲の下では冷たい空気が形成されます. その冷たい空気の周辺では新しい上昇気流が発生し,新たな積雲・積乱雲が発生します. ひとつひとつの積乱雲の寿命は,ほとんどが1時間未満ですが, このように積乱雲が新たな積乱雲を発生させ, 結果として降雨が長続きする場合もあります (たとえば線状降水帯など).

また,積乱雲が気温が 0 ℃ となる高度(夏の日本付近では高さ 5 km 程度) 以上に発達すると雪が形成されますが, 積乱雲の中の上昇気流が強い場合はあられ(霰)やひょう(雹)が形成され, 大きなひょうが地上にまで落下すると, 農作物や構造物にひょう害が発生します. あられやひょうが形成される場合, が発生することもあります.

さらに,積乱雲内の上昇気流が非常に強い場合, 地上付近で竜巻が生じることがあります. また,積乱雲から大量の降水があり,さらに地上付近の空気が乾燥している場合, 積乱雲の降水に伴う下降気流が強くなり, それが地上で発散することで突風 (ダウンバースト)が生じることもあります.

積乱雲と気象災害

以上のように, 気象災害のほとんどは発達した積乱雲が原因となります. このため,気象災害を予測するためには, 積乱雲を監視することが非常に重要となります. さらに,積乱雲は積雲が発達したものですので,積雲を監視し, 発達する積乱雲になる積雲を特定することが, 気象災害のより早い予測に重要です.