雲レーダー観測による積雲分布(東京周辺)

よくある質問

同心円状の雲分布

雲分布の表示画面に不自然な同心円状の雲分布が現れる場合があります. これは雲が実際に同心円状に分布しているわけではなく,上空に薄い層状の 雲があるときに表示されます.

雲レーダーでは,パラボラアンテナをある仰角(上下方向の角度)に固定したまま, 水平方向に回転させる動作を,複数の仰角で行いながら観測を実施します. その時,薄い層状の雲があると,その一部のみが観測され,結果として同心円状の 雲分布が表示されてしまいます(下の模式図).

通常,このような薄い層状の雲から局地的な大雨が発生することは稀ですが, 周辺に発達した積乱雲がある場合があります.また,このような薄い層状の雲の中で 降水が形成され,地上に降ってくることもあります(層状性降水).

層状雲と同心円状の雲分布の関係
雲レーダーにより層状の薄い雲を観測した場合に表示される同心円状の雲分布の模式図.

観測範囲

ここで使用している雲レーダーは,1台で半径30 kmの範囲を観測することが できますが,このウェブページでは「ある高度幅 (通常は海面高度1.5 km から 5.0 km)で観測された雲の分布」を表示しています.雲レーダーの近傍は 比較的低い高度でしか観測できないため,他のレーダーで別途観測されない限り, 雲分布が表示できない領域となります.

また,非気象エコーと判定された領域も観測範囲から除外されます.非気象エコー には地形や建物からの電波の散乱(グランドクラッター)や,上空に巻き上げられた 昆虫などによる電波の散乱,観測範囲外の降水からの電波散乱の重畳(二次エコー, セカンドトリップエコー),強いエコーの近傍に現れるレンジサイドローブなどがあります.

観測範囲
雲レーダーの観測範囲(白影・黒輪郭).レーダーの至近距離は単体の レーダーのみでは観測できないため,他のレーダーによりカバーされる.

観測できる雲

雲レーダーは積雲が観測できるように設計されたレーダーですが, 比較的小さな雲粒から構成される濃度の薄い雲は観測できません. たとえば,よく晴れた日の低い高度に現れる好晴積雲(わた雲)は, この雲レーダーでほとんど観測されません. もうすこし成長して,比較的背の高い雲になると雲レーダーで観測され始めます.

観測できる雲
左)雲レーダーでの観測が難しい好晴積雲の例.右)雲レーダーで観測できる積雲(雄大積雲)の例. 同じ雲の雲レーダーによる観測結果も同時に示します. 好晴積雲・雄大積雲の例として 「ふるリポ!」 に投稿された写真を使用させていただきました.